狛江メディカルビルディング
- Year
- 2022
- Place
- 東京都狛江市
- Texture
- STEEL
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
北海道虻田郡ニセコ町は積雪2300mmの多雪地域で、長期荷重時で500kg/㎡、地震時で250kg/㎡の積雪荷重を考慮しなければなりません。ここに純粋な木造を設計しようとすると、各層200kg/㎡~350kg/㎡なので、1~2層増えたような外力と闘わなければなりません。「それなら、RCでの設計は?」と思うかもしれませんが、ニセコはコンクリートと型枠の施工者が限られており、金額が高騰していて、金銭的な面で適しませんし、木造のような自然素材のぬくもりや部材のプロポーションはとても魅力的で、住宅のような人に寄り添う建築では、木材を積極的に活用するのがよいと思います。「この木造の良さを引き出しながら、構造的に成立させるにはどうしたらよいのか?」を試行錯誤し、Steelのhardと木のsoftをHybridで互いの強みで弱点を補うという着想に至りました。
外周部に対震要素を配置したシンプルなSteelブレース構造で、水平構面は合板により水平力を伝達することで、内部の生活に近い部分を自然素材の木造するだけでなく、建物全体の軽量化を図っています。よって、柱の部材断面は、□-80×80×4.5〜□-100×100×9、梁成は200程度の木質構造に近いサイズ感に抑えた設計です。積雪を除けば、少し重めの木造程度の荷重で、Steelのhardな物性を利用すれば、最大スパン5.4mを木造と遜色ない断面で実現しています。通常の木造よりも対震要素のある鉛直構面が少なく、水平構面の水平力伝達が問題ですが、より高度な詳細検討を行うことで耐力を調整し、解決しています。木造では計画しにくいハイサイドライトもSteelで設計することで可能になり、意匠的な計画にも柔軟に対応しています。 このプロジェクトでは、木造とSteelを複合的利用しているため、お互いの物性を考慮した繊細な設計が必要となり、施工においても、木工事と鉄骨工事のどちらも高い技術力を必要とします。 木とSteelの相互関係の強い建物なので、設計の勘所を理解し、サブコンどうしも通常より互いの工事への理解が重要で、コミュニケーションを密に取る必要があります。この橋渡し的な部分の大役を担ってくれたのが浦野工務店の浦野さんです。これにより、どちらのサブコンも前例のない工事の円滑な施工を可能にしています。 このプロジェクトを皮切りに、構造形式としてもその後の使われ方もHybridな構造計画がAIGではデフォルトとなり、建物の剛性バランスや水平力の伝達経路を工夫して、意匠的にも構造的にも洗練されたものになっています。洗練された建築を施工で実現し、最終的に利用者に質の高い空間を提供する、意匠+構造+施工の連携の重要性が表出したプロジェクトです(鶴田 直哉)