きたせんり愛育保育園
モーメントダイアグラム状のダイヤ型スラブの遊戯空間
Overview&Goal
大阪府吹田市の北千里駅の近くにある新設の保育園です。
協働するキアラ建築研究機関の杉本さんとは、もう10年ほどの付き合いになるため、これまでさまざまな建築物を一緒に計画しました。
杉本さんと安藤は、同世代ということもあり、プロジェクトへの熱量やアイディアを高い次元で共有しあえる仲間でもあります。
メイン棟2階の中央部分に遊戯場として大空間を計画し、前面のバルコニー伝いに山形スラブが特徴的な屋外運動場棟の2階にある屋上に続いています。
保育園という福祉施設に望まれる経済性だけでなく、必要とされるのびのびとした大空間の実現に対して構造デザインがどのように寄り添えるかが今回のテーマとなりました。
この建物の構造計画/設計のテーマは、
①立体的なスラブが特徴的な大空間の実現
②外観を特徴づける有機的な開口を持つ山形屋根の屋上
③コストパフォーマンスに寄与する構造的手法
などとしました。
Idea
①計画の最初期は、遊戯場スパンの半分での切妻屋根で特徴的な構造にしよう。と話していました。ですが、設備と環境の検討を進めていくと、どうしても設備のレイアウト上、棟ラインを片寄せにする方が空間としての納まりがいいね。ということになり、構造的には立体効果が得にくいoneway架構となるため、力の流れに従順な下に凸なスラブを計画しました。@2.0mの下に凸な折版のようなダイヤ型スラブにはアンボンドPC鋼より線を配し、懸垂力を与えています。
また、片流れのオープン側のエッジに生じる長期のスラストについても、スラスト方向に偏心距離を持たせたスラストをキャンセルするアンボンドPC鋼より線を配線して、長期の変形を抑制しています。
②この保育園の敷地は周囲を坂に囲まれており、本体とは別棟で屋根付きの屋外運動場棟があります。その運動場は向かいの道路と同じ高さになっており、本体とはまた違った特徴的な構造計画となっています。
一言でいうと薄肉ラーメンなのですが、山型形状なので、大きくスラストが発生するため、片持ちに近い応力状態となっており、実は本体より技術力を投下して構築しました。
③この建物の全体的な構造は、壁と同厚の柱梁を計画し、壁にフレームを内蔵した耐震壁付ラーメン構造としています。柱や梁による構造の凹凸がなくなることで、内部の仕上げに対する影響を減らすことができるだけでなく、型枠工事にかかる手間や材料を減らすことができ、コストパフォーマンスの高い構造となっています(村松 美幸)





data
- 所在地
- 大阪府吹田市
- 用途
- 保育園
- プロジェクト期間(開始)
- 2020.12
- プロジェクト期間(竣工)
- 2022.03
- 規模
- 地上2階
Credit
- クライアント
- 社会福祉法人恵泉福祉会
- 建築設計
- 有限会社キアラ建築研究機関
- 立役者(外部)
- キアラ建築研究機関 杉本さん
- 立役者(AIG)
- 村松 美幸