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AIG

Projects

HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.

平和ちとせ保育園

木軸ダブルフレームによる対震壁集約構造
  • TIMBER TIMBER
  • RC RC

over view & Goal

福岡市内の起伏のある住宅地に位置する、保育園の新築プロジェクトです。敷地の中にある約6mの崖に沿って、地下2階地上2階建ての建物を計画しました。道路に面して低くなっている東側半分に地下階を設け、高い方の西側半分は地上階のみの構成です。地上階のボリュームは、東西で分節され、ちょうど寄棟屋根を真ん中で真っ二つに分けたような外形となっています。構造材料の選定は、地下階は水の問題があるのでRCを選択しました。地上階も地下と同じRCとすると、工期が長く開園に間に合わないため、Steelか木のどちらかで検討することになりました。AIGとしては、保育室・遊戯室等が6m前後の無柱空間で木造とするにはやや空間が大きいので、Steelで進める方がやりやすいと考えていました。ですが、工事を請け負う施工業者は木造住宅を得意としており、コスト的にも木造の方がよいということで、木造で進めることになりました。

この建物の構造計画/設計のテーマは、①少ない壁面で、通常の1.5倍の耐力壁を配置する対震計画②魅せる寄棟天井の在り方、③スラスト応力の処理方法などを意識しながら設計を行いました。

Idea

構造計画/設計のテーマに則して、AIGのアイデアを挙げると、

①この建物は地下部分がWRC、地上部分が木質構造となり、いわゆる立面混構造と呼ばれる併用構造に該当するため、設計用地震力を通常の1.5倍とする必要がありました。言い換えると、耐力壁を通常の1.5倍長く確保するということになります。保育室・遊戯室の採光面を広く取るために、外壁開口が大きくなるので、どちらかというと耐力壁をとれる場所はむしろ少なくなります。この問題を解決するために、AIGでは通常の105幅の柱梁フレームを2列並べた210幅の木軸に、たすき掛けの筋交を2列設けることで耐力壁の集約配置としました。小部屋が並ぶ戸建て住宅であれば、フレームの厚みを210にすると支障が出ますが、今回の建物の規模感でいえば、壁の必要長さを適切に配置するという意味でもバランスのよい解決法だと考えています。

②計画の段階からKyaraの杉本さんとは、「勾配屋根が室内でも感じられるように、小屋梁をなくして勾配天井としたい」「(法的に可能であれば)天井仕上げをせずに構造表しで見せたい」「隅木(勾配面同士の境界に出てくる屋根の梁部材)をなくしたい」という話をしていました。ただ、仕上げのおさまり等を考えると、切り替わり部分をおさえるものが何もないというのは流石に難しいので、だったら隅木と平行に登り梁を並べたら、隅木が目立たなくなるのではないかと考え、隅木と並行な登り梁を斜交させる案で実施設計をまとめました。この案を山佐木材の吉松さんに示したところ、「端部の立体的な接合部が複雑なので登り梁を斜交させることは難しい」という答えが返ってきました。AIGの方でまだ接合詳細を整理していなかったことも、そう思わせた理由の1つになったかもしれません。詳細図を描くのを怠ってはいけないと改めて感じました。結局、登り梁斜交案は断念し、2丁掛けの一般的な登り梁配置で施工を行いました。耐火等の法的な関係で天井仕上げが必要となり、小屋梁なしの勾配天井のアイデアだけが実現しました。

③この建物の屋根は、棟部分の直下の柱と外周の柱支持されており、常時的な鉛直荷重によるスラスト応力(切妻や寄棟の屋根が変形して横に広がろうとする力)は基本的に大きくないのですが、東西ともに12m×12m程度の平面で木造にしてはスパンが大きいことや、柱の圧縮変形の影響などから、外周部登り梁を支持する軒梁には鉛直方向よりも大きな水平方向応力を処理する必要がありました。そのような応力状況に対して軒梁が果たすべき役割を整理すれば、高さ寸法よりも幅寸法を大きくとったほうが合理的であることは明らかでした。軒梁の断面としては150×360の集成材を横使いしたものを採用しました。

天井を貼る・貼らない、構造を見せる・見せないという話はいつもありますが、AIGでは構造が表しになるかならないかにかかわらず、より美しい構造の在り方を実現したいと考えています。次に私が設計する寄棟は今回の反省を踏まえて、さらに洗練された美しい構造が実現できると確信しております(藤田 啓)

 

data

所在地
福岡県福岡市
用途
保育園
プロジェクト期間(開始)
2016.04
プロジェクト期間(竣工)
2017.08
規模
地上2階地下2階

Credit

クライアント
社会福祉法人ちとせ交友会
建築設計
有限会社キアラ建築研究機関
立役者(外部)
山佐木材
立役者(AIG)
藤田 啓